美容院を節約した話

美容院が苦手だ。

他人に触られるってのは緊張するし、美容院はハサミを使うところなわけで、全幅の信頼を美容師に対して持っているならともかく、かなり無防備な状態で後でハサミを使われるわけだよね。

これに100%リラックスするなんて、無理だ。

 

だけど美容室っていうところは基本的にリラックスのための施設のようで、なんかいろいろな付加価値がプラスされて、けっこう高額な料金を取られるところだ。

カットをしに行っても、カットだけではおさまらず、シャンプーがつき、マッサージがつき、セットがつき終わるときにはご丁寧にヘアスプレーなどをふんだんにかけられる。

そうすると、スプレーを落としたいからその晩も結局自分でシャンプーしなおすことになり、美容院でやってもらったシャンプー(気持ちいいけど)は、1日と持たないことになるのだ。

 

これだけのサービスを受ければ当然、所要時間だって1時間コースだし、その間にはなにかと美容師さんとおしゃべりしなくてはならなくなる。

このおしゃべりがまた、私にとってはストレスだ。

 

けして、私は一般的に「おしゃべり」が苦手な人ではないと思う。

世間話をすることはできるし、感じよく振舞うことも人並みにはできる。

話しやすい人、なんて思われちゃうことだってないとは言えないかもしれない。

 

だけど、それは自分のリラックスではない。

 

やたらと美容師さんに気を遣ってしまい、笑顔が張り付いたようになって帰ってきて、ぐったり疲れてしまうのだ。1時間も2時間も美容室にいると。

 

結果、美容室に行くのは気が重たいことになるから、なんだかんだ理由をつけて、美容室から遠ざかる。

そうするうちに、髪の毛はいつのまにか腰に届くようになる。

髪って、伸びるときは徐々にだから、いきなりシャンプーが大変になったりしない。

すると、油断するのだ。

自分の髪の毛はまだそんなに長くないと。

 

で、ギリギリまで我慢した結果、ある日いてもたってもいられない気分になって、切りに行く。

いくらなんでも傷んでるよ、とか、いくらなんでもまとまらなくなってきたよ、とか実感したら、もう我慢ならなくなる。

 

でも、美容院は予約が必要。

思い立ってしまったが最後、その日の予定は美容院が最優先になる。

夕方に予約した美容院のために、他の時間を、時間を気にしながら落ち着きなく過ごすことになる。

 

リラックスできるならいいんだよ。それでも。

でも、私はいまいち美容院でリラックスできないタイプの人のようだ。

 

先日、ついに髪の毛に我慢できなくなった。

傷んでるし、先の方が細い。

シャンプーするときもさすがに負担を感じるくらい長くなったのを感じる。

もう、覚悟を決めて、美容院に行かなければ、落ち着かなくて仕方がない。

 

で、思いついたのが、最近増えている「1000円カット」みたいなやつだ。

うちの駅にもそういう美容院(というか床屋)が数件あるし、そういうところは床屋系なのかもしれないけど、「女性の方もどうぞ」とか書いてある。

「どうぞ」と書かれているんだから、行ってみても浮くことはないかもしれない。

勇気を出して、1000円カットを体験してみるのだ。

 

前に見た日経MJの記事では、そういう美容院(床屋)が増えていて、女性の人も、前髪をちょっとカットするのとかで利用しているらしい。

勇気を出そう。

だが、私は前髪カットみたいなちょろい要件ではなく、

「髪の毛を20cmくらいカットしてください。アップにはできる程度。肩下くらい」

という大胆な要望をする。

美容院ではロングの場合、追加料金を取られたりするけれど、1000円カットの店で、そんな図太い要望が聞き入れてもらえるだろうか。

 

まず、駅前の(というか駅についている)カットハウスの前をさりげなく通ってみる。

ガラス張りなので中を覗ける。

前に旦那が利用したことがあるので、聞いてみると、

「女の人もいたよ。平日の昼間だったら、男なんかいないんじゃない?」

との意見に心強さを感じていた。

 

だが、ガラス張りからさりげなく覗いてみると、中は明らかに、おじいさまたちで満員。

 

断念する。

 

で、もう一件。

最近チラシが入っていた店のことを思い出した。

駅近なんだけど、ちょっと難しい場所にある。

チラシには「女性や子ども歓迎」って書いてあったはずだ。

 

その店を探すこと、5分くらい。

チラシにあった地図を、記憶をたどって思い出す。

 

見つけて、まずは通行人のふりをして、店を横目で見つつ通り過ぎてみる。

カットの席は二つ。

客はいない。

女性の美容師さんが、退屈そうに本かなんかを眺めている。

最近オープンしたのか、ビルの一階で、普通の事務所みたいな作り。

特別な照明もなければ飾りもない。

インテリア用品の店などにある大きな鏡が二つ、床から直接たててあるのが見える。

シンプルすぎるその店構えがかえって、実用だけを追及していることを感じさせる。

 

その路地を一周した。

二周目、

「うーん、どうしようかなあ」

と思いつつ、角に出してあるその店の看板をもう一度見る。

「女性、子ども歓迎」

とやはり書いてある。

看板の文字も、なんとなく女性を狙ってるみたいな字体だ。

他にお客さんもいない。

 

「行っちゃえ!」

と、事務所のようなドアをあける。

 

***

 

所要時間は約20分。

最近開業したお店だという。

 

美容師さんは、ものすごくざっくばらんな人で、本当の意味でリラックスできる会話ができた。

開業したてで試行錯誤中って感じに、どうやって店を見つけたか、とかいろいろなことを聞かれた。

こういう話ならOKだ。

変に、

「最近どこか旅行いきましたか?」

なんて聞かれる方がよほど疲れる。

 

ここに開業した理由や、駅の再開発の話、どこのお店が安い、など、普通の自営業者の会話、主婦の会話を目一杯やってるうちに、終了。

シャンプーやマッサージ、ヘアスプレーなどの余計なものは一切省略。

必要な、「20cmカット」のみを手早く的確にやってくれたのだ。

 

おまけに、地域の情報を仕入れることもできた。

 

帰り道の満足度は、高い美容院を出たあとの満足度と同じだった。

余計に気遣いをすることもなかった。

20cmも切っても1000円。消費税さえもとられなかった。

大満足である。

これなら、今までの5倍の頻度で通って、普通の美容院一回分だ。

 

私のように、多少伸びても変わらず、切っても誰にも気づかれないロングの人はもとより、頻繁に整える必要のあるショートの人だって、「トップスタイリスト」と「スタイリスト」で2000円も料金の変わる美容室に1回いく間に、こういうところに3回行った方がヘアスタイルをいつもきれいに維持することができるんではないか、と思った。

 

私の場合は「女性、子ども歓迎」の文字に勇気百倍となったわけだが、近所にこういう美容院(床屋?)があれば、通りがかりに店内もさりげなく観察しておくといいだろう。

女性でも入りやすそうだと思ったら、空いてる時間帯とかを狙って思い切って入ってみよう。

私が見つけたような、独立したての一生懸命な美容師さんと出会えれば、すごい収穫になると思う。

 

男性でも、普通の床屋だと髭剃りがあってイヤという人もいる。

あれ、刃物を顔に突き当てられるわけだから、かなりの信頼関係がないと実は怖いよね。

そういう男性にとっても、1000円美容院は合理的でお勧め。

 

美容院でリラックスできない全ての人に、1000円美容院は良い商売だなあ、と思う。

 

 

(H20.3.14)

 

★この方法の効果

 

・短時間で同じ効果が得られる

・トップスタイリストの美容室がいかにイメージ優先かを体験できる

・失敗したとしても1000円だから痛みが軽い