消費者契約法にはどんな規定があるの?(1)

2000年に成立、2001年に施行された消費者契約法では、勧誘の際に一定の行為があると、その契約全体を消費者が取り消しできるという規定ができました。
さらに、契約条項の中に消費者に一方的に不利な条項があれば、その規定に限り無効にすることができます。
消費者契約法ができて消費者が権利を行使することで救済が期待できるのは、この2点です。
まず、「契約取り消し」「契約条項の無効(=変だと思ったら問いただせる)」の2つができるのだ、ということを覚えておきましょう。

さらに、事業者の説明責任も消費者契約法には書かれていますが、これは努力規定です。
「説明に不備があった場合には契約を取り消せる」などと勘違いしやすいのですが、それは違います。
たとえ説明不十分など、業者が説明の努力をしていなかったとしても、それだけで即「取り消し」「無効」にすることはできません。努力を怠った事業者にも罰則はありません。

ただ、相手が金融機関だった場合は例外として説明に問題があった場合損害賠償を請求することができます。
これは消費者契約法と同時に施行された金融商品販売法にそのような規定があるためです。
金融商品販売法の言う「損害賠償」とは、元本欠損分と解釈されています。

では、まず1点目の「契約全体を取り消しできるケース」を見てみましょう。
5つの勧誘行為が挙げられており、このどれかにあてはまれば取り消し対象です。
(1)契約対象物(商品やサービスの質や値段など)について嘘をついた(不実告知)
(2)将来のことが良くわからないのに断定的な表現をつかった(断定的判断の提供)
(3)消費者が契約をやめる原因となるような不利益な事実をわざと隠し、良い情報ばかりを説明して契約させた(不利益事実の故意の不告知)
(4)自宅や職場に訪問してきて断っても帰ってくれず根負けして契約した(不退去)
(5)店舗や営業所で勧誘をうけ、帰ろうとしても契約するまで帰してくれなかった(退去妨害)

こういうケースです。
それぞれどんな場合があてはまるか、具体的に頭に描いてみてください。

ただ、気をつけなければならない点があります。
・動機に関する嘘は対象にはならず、あくまでも売りつけようとする商品・サービスに関する嘘であること
・勧誘はあくまでも「特定される個人」に対する行為を指すため、不特定多数を対象とした広告表現などは取り消しの対象にはならないこと(特定商取引法の表示違反や景表法違反などに該当する可能性はありますが、違反即被害者救済の規定がありません)
・不退去は・退去妨害は時間の長短に関わらず、消費者の精神的圧迫につながれば取り消し対象になる。ただ、「圧迫」を表現する必要があり、不退去・退去妨害時に消費者側が「帰ってくれ」「帰らせて」「契約はしない」などなんらかの意思表示をしている必要がある。

などが、注意するべき点と解釈できます。

ただし、消費者契約法の場合、民事裁判の根拠法となる法律なので、違反即罰則があるわけではなく、最終的には裁判所で争う形になります。
裁判所がどのような判断をするか、判例が蓄積されていくに従い、これらの解釈は変わってくる可能性もあります。

(H17.2.15)

消費者契約法にはどんな規定があるの?(2)

消費者契約法でできるもうひとつの消費者救済は第8条~第10条の「消費者に一方的に不利になる契約条項の無効」です。
第8条 事業者の責任を否定する条項(一切責任は負いません)
第9条 消費者の損害賠償をやたらと高くする条項(損害賠償や違約金など)
第10条 消費者の利益を一方的に害する条項


この場合、契約そのものは有効なものとして存続します。
契約そのものが遡って否定される第4条の規定と異なる部分です。
8~10条のようなケースでは、その不当条項の部分が無効となり否定されます。
第9条の挙げる条項などは、実生活においても少なくありません。
同業他社に比べて高すぎる解約金や、年率14.6%を超える遅延損害金は無効です。
ただし、常識的な範囲での解約金や損害賠償金の請求はもちろん合法であり、契約条項が無効になった場合、消費者の支払うべき賠償金は、常識の範囲内の金額に減額されます。

この条項を根拠に争われている裁判で、「私立大学の入学金・授業料の返還問題」があります。
大学受験では(高校受験も)一般に「本命」と「すべり止め」を受験します。
そこで先に「すべり止め」の合格が判明した場合、一定期日までに入学金や授業料を納めることになります。
これがまた良くできていて、支払期日が「本命」発表日の前日だったりします。

私大の受験日はばらばらで、これを踏まえてうまく受験する大学を選んだり、あくまで第一志望を求めて浪人する、などの道もありますが、高校受験の場合、さらに悲惨です。
私が受験した時代の話に遡りますが(現在のしくみよく知らないので)、東京都では私立高校の受験日は2月18日~20日の3日間に集中していました。公立高校は2月の終わり頃にいっせいに受験します。
私立高校には、第一志望受験生が集まる学校と、すべり止めにされることの多い学校が出てきます。
とくに18日に多くの高校が試験をするため、19日が試験日などの高校はすべり止めにされる確率が高い。
学校側はそれを見込んで定員の倍以上の合格者を出したりします。
そして、これらの学校の授業料納付日は公立高校発表日の前日だったりするわけです。

そもそも学校側もそれを見込んで定員数以上に合格させているわけですから、これはすべり止めにした学生が悪いというよりも、そういうビジネスモデルの学校だ、ということで、9条を適用するにしても、「では、消費者(学生)は一般常識の範囲内の損害賠償を払うべきなのか」という問題も残ります。
授業料関連の訴訟はいくつかあり、授業料のみ返還を認めた例や、入学金も含めて返還を認めた例、4月以降の辞退であったため前期の授業料の支払いを求めた例などいろいろな判決がありますが、いずれも根拠法となっているのは消費者契約法の9条です。

(H17.2.15)